日本活断層学会が2007年9月に設立されてから15年以上が経過し、地球惑星科学分野や防災科学分野で確固たる地位を占める学会となりました。この間、2016年熊本地震や2024年能登半島地震などの被害地震が複数発生し、活断層研究や地震防災に対する期待や要請はますます高まっています。宇宙測地学の進展や詳細な地形データの整備、新たな年代測定手法の普及、簡便な物理探査手法の開発などもあり、活断層のマッピングや活動度の解明に関する研究が大きく進展しました。一方で、大地震が発生するたびに新たな研究課題が浮き彫りになってきました。固有規模よりも小さな地震の発生や複数の活断層の連鎖破壊の問題、沿岸域の活断層のマッピングや変位速度・活動履歴の解明など、学問的にも防災の観点からも重要な問題が今後の課題として残されています。
日本活断層学会は、「活断層」という研究対象名を冠した学会であり、活断層に関わる個々の学問分野の進展と共に、多分野からなる学際的で総合的な研究を進めていくことにその意義があると考えられます。2020年からのコロナ禍を経て、2021年度以降の学術大会は対面開催となり発表件数は年々増加しています。特に大学院生をはじめとする若手の発表が増加しているのは心強い限りです。一方学会誌「活断層研究」は他の地球科学系学会の和文学会誌と同様に、掲載論文が少ない状態が続いています。会員サービスの柱は学術大会の開催と学術雑誌の刊行ですので、これらの充実を図っていきたいと考えています。また2025年は、我が国の活断層・地震研究に大きな影響を与えた兵庫県南部地震から30年の節目となります。この機会に、その間の活断層研究の進展を振り返り、今後の方向性を忌憚なく議論する場を設けることができればと考えています。
研究の活性化・若手育成・アウトリーチ活動など、ひとつひとつの課題に着実に取り組んでいく所存です。学会活動に対して、これまで以上にご支援ご協力を頂きますようお願い申し上げます。
2024年6月
日本活断層学会 第9代会長
堤 浩之(同志社大学教授)
2011年3月19日
2011年3月11日、観測史上最大の地震が発生しました。巨大な地震と、それに伴う強大な津波により、多くの方が亡くなられ、また多数の方々が被害に遭われました。地震防災に直接、間接に携わる日本活断層学会会員を代表し、亡くなられた方に心から哀悼の意を捧げます。また被害に遭われた方々にお見舞い申し上げます。
日本活断層学会は、この巨大地震や、津波堆積物に残された過去の地震活動とともに、陸域・海域の活断層の調査・研究をさらに進めて、なお一層防災・減災に役立つよう努力を続けていくことを、ここに新たに誓います。
日本活断層学会会長
島崎邦彦
3月11日に発生した観測史上最大の地震と、それに伴う強大な津波により被害に遭われた会員の皆様に心からお見舞い申し上げます。
多くの方が亡くなられ、また多数の方々が被害に遭われました。防災・減災を目指して学会活動に取り組まれた皆様は、なぜという思いの中で、これまでの取り組みを振り返り、どうしたらと考え続けていらっしゃることでしょう。本日、学会として一般の方へ向けた短いコメントを、別添のように発表いたします。
津波堆積物に基づく調査・研究が進み、このような巨大津波の危険性が明らかになっていたにもかかわらず、今回の事態を予測できなかった不明を恥じるとともに、会長として先頭にたって減災に向けて取り組まなかったことを、お詫び申し上げます。
今後とも余震活動が続き、誘発地震の危険性も高いので、どうか皆様今一度周囲を見渡して、安全に活動を続けられますよう、お願い申し上げます。
地震や津波について、世の中の関心が高まっており、周囲の人から問い合わせなどもあることかと思います。直接的な救援活動だけが減災に役立つわけではありません。正しい知識を普及して頂くことも、防災・減災の第一歩と考えます。ぜひ、この機会に啓発活動をお進め下さい。
今回の災害は、低頻度巨大災害とも言えましょう。活断層で起こる地震による災害も、一般に低頻度であり、しばしば甚大な被害をもたらします。そのような災害に、どのように備えたら良いのか、機会をとらえてリスクコミュニケーションを進めて頂くことも重要と考えます。
亡くなられた方のご冥福を祈り、その犠牲を無駄にしないため、さらに学会活動を進めて行こうではありませんか。
日本活断層学会会長
島崎邦彦
日本活断層学会 設立集会(2007年9月22日)於 学士会館、東京